2005年 04月 18日
アヴェ・クルクス、スペス・ウニカ |
ベルリンへ旅したというフアン(バスク人)からたくさんの画像が届きました。中でもチェックポイントチャーリーというかつて東ドイツから西ドイツへ入る時の検問所の近く、かつての「ベルリンの壁」のそばにあるというおびただしい十字架の写真はとても印象的でした。
東から西へ亡命しようとして、失敗し生命を落としていった人々のいのちの痕跡なのでしょう。
壁が壊されてから20年そこらの年月が経って、すこしずつ過去を振り返る時期になってきているのでしょうか、ここ数年のあいだにベルリンの壁、第二次大戦下のドイツを舞台にした映画などもたくさん作られているような気がします。観たもの、あるいはこれから観ようと思っているものだけでも、『グッバイ・レーニン!』(エンターテイメントとしても気軽に楽しめる映画です)、『ダウンフォール』(ヴェンダースの『ベルリン天使の詩』のブルーノ・ガンツがなんとヒトラー役!日本での公開はこれからです)など枚挙にいとまがありません。しかし、やはり一度ベルリンやアウシュビッツのような場所に実際行ってみたいと思っています。そういう場所で感じるものは…あえて控えめに言いますが、一本の映画が与えるもの以上に大きいものがあるだろうと思います。
そんなこんなで最近再読していたエディット・シュタインの伝記。フッサールの弟子であったユダヤ人哲学者ですが、チェックポイントチャーリーの十字架と同じように、彼女の生涯を知ったものに対して、究極の選択を迫ってくるような強烈で純粋な生涯を送った女性です。先日なくなったヨハネ・パウロ二世によって聖人の列に加えられ、さらにヨーロッパの守護聖女とされた「十字架の聖テレジア・ベネディクタ」と呼ばれる人でもあります。ユダヤ人として生まれ、精神的な模索の末にキリストと出会った人、そしてケルンのカルメル会修道院の修道女としてキリストの十字架の意味を問い続け、最終的にアウシュビッツでホロコーストの犠牲者のひとりとなることでその答えを出した人。改めて伝記を読んで、とことんドイツの複雑さの中でそのシンボルのような生涯を生きた人だったのだなあ、と思います。カトリックと出会い、そして、プロテスタントの友人を代母として洗礼を受けたこと、娘の改宗を悲しむ母のためにいっしょにシナゴーグで、カトリックの祈祷書を使い同じ詩編を祈ったことなど心を打つエピソードの数々はシンボリックでありながら生身の人間の温もりを感じさせるものです。立場の違い、というシンプルだけれど超克しがたい深い溝をどう乗り越えてゆくか、という卑近でさえある人間の普遍のテーマを考えるヒントを伝記を再読することで改めて与えてくれたように感じています。
東から西へ亡命しようとして、失敗し生命を落としていった人々のいのちの痕跡なのでしょう。
壁が壊されてから20年そこらの年月が経って、すこしずつ過去を振り返る時期になってきているのでしょうか、ここ数年のあいだにベルリンの壁、第二次大戦下のドイツを舞台にした映画などもたくさん作られているような気がします。観たもの、あるいはこれから観ようと思っているものだけでも、『グッバイ・レーニン!』(エンターテイメントとしても気軽に楽しめる映画です)、『ダウンフォール』(ヴェンダースの『ベルリン天使の詩』のブルーノ・ガンツがなんとヒトラー役!日本での公開はこれからです)など枚挙にいとまがありません。しかし、やはり一度ベルリンやアウシュビッツのような場所に実際行ってみたいと思っています。そういう場所で感じるものは…あえて控えめに言いますが、一本の映画が与えるもの以上に大きいものがあるだろうと思います。
そんなこんなで最近再読していたエディット・シュタインの伝記。フッサールの弟子であったユダヤ人哲学者ですが、チェックポイントチャーリーの十字架と同じように、彼女の生涯を知ったものに対して、究極の選択を迫ってくるような強烈で純粋な生涯を送った女性です。先日なくなったヨハネ・パウロ二世によって聖人の列に加えられ、さらにヨーロッパの守護聖女とされた「十字架の聖テレジア・ベネディクタ」と呼ばれる人でもあります。ユダヤ人として生まれ、精神的な模索の末にキリストと出会った人、そしてケルンのカルメル会修道院の修道女としてキリストの十字架の意味を問い続け、最終的にアウシュビッツでホロコーストの犠牲者のひとりとなることでその答えを出した人。改めて伝記を読んで、とことんドイツの複雑さの中でそのシンボルのような生涯を生きた人だったのだなあ、と思います。カトリックと出会い、そして、プロテスタントの友人を代母として洗礼を受けたこと、娘の改宗を悲しむ母のためにいっしょにシナゴーグで、カトリックの祈祷書を使い同じ詩編を祈ったことなど心を打つエピソードの数々はシンボリックでありながら生身の人間の温もりを感じさせるものです。立場の違い、というシンプルだけれど超克しがたい深い溝をどう乗り越えてゆくか、という卑近でさえある人間の普遍のテーマを考えるヒントを伝記を再読することで改めて与えてくれたように感じています。
by brunodujapon
| 2005-04-18 23:28
| 抹香紀行